苦味が主役だと思っていたコーヒーに、フルーツ感に縁取られた旨味・酸味・甘味を見つけた。ウイスキーの飲み比べと驚くほど共通する体験でした。

奈良県北葛城郡河合町にある焙煎所、吉川電気商会 YOSHIKAWA ELECTRIC COFFEE ROASTERSさんで、水出しアイスコーヒーの3種飲み比べをしてきました。普段はウイスキーで飲み比べをしている私ですが、これが実に面白い体験でしたので記録しておきます。
店内では焙煎の様子を間近で見ることができます。ガラスの中で豆が舞う様子は、いつまでも見ていられます。
供された3種

| 銘柄 | 産地 | 精製 | 焙煎 |
|---|---|---|---|
| ミャンマー オレンジサンシャイン | シャン州ピンダヤ村 | ウォッシュド アナエロビック | ハイ(浅煎り) |
| ボリビア ラパス イリマニマウンテン マイクロロット | ラパス県カラナビ郡イリマニ地方 | ウォッシュド | ハイ(浅煎り) |
| 東ティモール ゴウララ | エルメラ県レテフォホ郡ゴウララ村 | ウォッシュド | ハイ(浅煎り)/フルシティ(深煎り) |
感じたこと
コーヒーというと苦味が主役だと思っていました。ところが今回、中にはフルーツ感に縁取られた旨味、酸味、甘味がはっきりと感じられるものがありました。苦味が全体を支える土台で、その上に果実の輪郭が乗っている。今までアイスコーヒーに感じたことのなかったアロマの豊かさでした。
ウイスキーのテイスティングと共通していたこと
飲みながら何度も「これはウイスキーと同じだ」と思う瞬間がありました。
1. グラスが変える
ワイングラスで供されたのが印象的でした。香りを集めて立ち上げるという発想は、ウイスキーのテイスティンググラスとまったく同じです。器が変わるだけで、受け取れる情報量が変わります。
2. 土地が味を決める
ミャンマー、ボリビア、東ティモール。しかも村名まで特定されたマイクロロット。これはスコッチでいう地域区分(スペイサイド、アイラ、ハイランド)であり、さらに言えばシングルカスクの考え方そのものです。
3. 造りの工程が風味を作る
「ウォッシュド」「アナエロビック(嫌気性発酵)」といった精製方法の違い。ウイスキーで発酵時間や酵母の違いが果実感を生むのと、理屈は同じです。
4. 熱の入れ方が個性を作る——焙煎は「樽」であり「麦芽乾燥」でもある
浅煎りか深煎りか。同じ豆でも表情が変わるのは、同じ原酒でも樽で表情が変わるのと重なります。
ただ、工程の位置でいえば焙煎はむしろ麦芽乾燥(キルン)に近い。原料そのものに熱を入れ、その後の工程へ持ち込む風味の土台を作る段階だからです。
そう考えると、ピートの焚き込み具合がそのまま焙煎度に重なります。どちらも「原料にどれだけ熱と煙を入れるか」というひとつのダイヤル。浅煎りでは素材由来の酸や果実感が前に出て、深煎りになるほど香ばしさと苦味が前に出る——ノンピートからヘビリーピーテッドまでの幅と、構造がよく似ています。
東ティモールが浅煎り・深煎りの両方を推奨されているのは、同じ蒸溜所がピートあり・なしを作り分けるのに似た面白さがあります。豆という素材は同じでも、熱の入れ方ひとつで別の顔になる。
5. 並べて初めて輪郭が出る
これが最大の共通点です。1杯だけ飲んでいたら「美味しいコーヒー」で終わっていたはずの差が、3つ並べた瞬間にはっきり言語化できる。ウイスキーの比較テイスティングとまったく同じ構造でした。
6. 言語化のフレームがある
各銘柄にレーダーチャート(フルーティ/コク/苦味/クリーン/甘味/フレーバー)が添えられていました。ウイスキーのフレーバーホイールと同じ役割で、感じたものを言葉にするための補助線になります。
味覚は地続きだった
ジャンルが違っても、「香りを取る」「差を並べて捉える」「言葉にする」という営みは地続きなのだと実感しました。ウイスキーで鍛えた感覚がそのまま使えましたし、逆にコーヒーで気づいたことがウイスキーの飲み方に返ってきそうです。
当店でも、飲み比べは一番おすすめしたい楽しみ方です。同じ蒸溜所の熟成違い、樽違い、地域違い——並べると驚くほど輪郭が出ます。ご興味があればカウンターでお声がけください。
お店の情報
吉川電気商会 YOSHIKAWA ELECTRIC COFFEE ROASTERS
奈良県北葛城郡河合町佐味田1632-4




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